廃線前を訪ねて


かつて北海道の大地を駆け巡っていた、今は廃線となった国鉄ローカル線のありし日の姿。

©北川宣浩 2000
胆振線

 

廃線前を訪ねて

江差線


線名:江差線(えさし・せん)
区間:五稜郭(ごりょうかく)-木古内(きこない)-江差(えさし) 79.9Km
※五稜郭-木古内は道南いさりび鉄道に転換。
全駅:[廃止になった区間のみ]木古内-渡島鶴岡-吉堀-神明-湯ノ岱-宮越-桂岡-中須田-上ノ国-江差

開業:1913年09月15日 五稜郭~上磯
全通:1936年11月10日
廃止:2014年05月12日
訪問:1979年05月03日

江差線は函館駅(分岐は五稜郭駅)から西に伸びる路線で、途中の木古内駅でさらに南西に向かう松前線と、北西に向かう江差線とに分かれた。松前線は1988年に廃止されたが、江差線は青函トンネルの貨物輸送もあり、五稜郭~木古内間は電化され、路盤も強化された。しかし木古内~江差間は北海道新幹線の開業(2016年3月26日)を待たずして、2014年に廃止された。五稜郭~木古内は第三セクター道南いさりび鉄道として頑張っている(2020年7月現在)。

初訪問は1979年5月3日で、寂しいところで駅前で食事をしたとスタンプノートに書いている。写真を写しておらず、入場券と駅スタンプだけが記録になっている。

江差駅スタンプ

2013年9月、廃止が決まった江差線(木古内~江差)の全駅で乗り降りをしようと、時刻表と格闘して、行ったり来たりを繰り返して全駅で降りる行程を組み、普通列車乗り放題の青春18きっぷでチャレンジした。
前日は木古内駅前のビジネス旅館に泊まり、6時43分の下り一番列車でまずは江差駅に向かった。木古内駅は北海道新幹線の工事の真っ最中だ。

木古内駅

読者が混乱すると申し訳ないので、江差から順に駅を紹介します。なお、雨が降ってきて気分が滅入り、全駅での乗降はあきらめて、にぎやかな函館に逃避してしまいました。

江差駅
江差駅はずいぶんと寂しい感じがする。すでに無人駅で列車が来たというのにがらんとしていた。かつてレイルウェイ・ライター種村直樹氏が江差の町歩きをしたとき、駅の方角を女児に聞いたら「駅なんか知らん」と言われて驚いた記述がある。種村氏は「鉄道に乗ることもないのか」と嘆いたが、知らないおじさんに口を利くのを禁じられていたのかもしれない。
江差駅
江差駅のホームも閑散としていた。

上ノ国(かみのくに)駅はかつて森喜朗元首相が「日本は神の国」と言ったことで、いちやく有名になった。本当に「カミノクニ」があるよと。
上ノ国駅
駅舎はあるが無人駅で、みやげらしきものを売っていた。

中須田駅は貨車の駅。雨が降り出してわびしさが募り、夜までかけて全駅を巡るのをあきらめて函館に向かった。NHK朝ドラ「あまちゃん」の昼の再放送をケータイのワンセグで見た。
中須田駅

桂岡は夜に訪れる予定だったが雨で全駅訪問を断念したので、車窓を含めて写真はありません。

宮越駅は木造の小さな駅舎があったが、駅員がいた気配はなく、ガランとした待合室のみで、虫が舞っていた。表に出て天野川にかかる橋を渡ると、向こうの集落から老人がやってきて、「おはよう」とあいさつをするのでこちらも「おはようございます」とあいさつをし返す。
待合室に戻ると案の定その老人が座っており、「遠くから来なさったのか」と聞くので「東京からです」と江差線がなくなるので乗りに来たと話し、しばし会話。
宮越駅

宮越駅と湯ノ岱駅の間に「天の川」駅というJRの駅ではない「構築物」がある。沿線を流れる天野川をロマンチックな天の川にたとえ、駅に見立てた土盛りをしてあるのだ。駅名表らしき看板も出ており、列車は徐行した。
なんでも土地の権利が2014年3月までらしく、江差線の廃線を待たずに壊される運命にあるらしい。
天の川駅

湯ノ岱(ゆのたい)駅は温泉がある。乗り継ぎ列車は1時間27分後で温泉に入り食事をするのにちょうどよい待ち時間だ。
湯ノ岱駅
徒歩11分で駅裏にあたる場所にある湯ノ岱温泉こと、上ノ国町国民温泉保養センターに着いた。入口の券売機で大人350円のチケットを買う。日帰り温泉としては安い。
湯ノ岱温泉
温泉の湯船は3つあり、ほかに打たせ湯があった。しかし石鹸はない。
かけ湯をして38℃源泉の表示がある真ん中の湯船に入ると、鉄色に濁った湯。皮膚にプチプチと気泡がついて、効能がありそうな実によい温泉だ。ほかの湯船も温度が違って楽しめた。
郷(さと)という食堂があるので、塩ラーメン550円をいただいた。

神明駅は雨が激しくなっており、降りるのをあきらめた。
神明駅

吉堀駅も雨で降りなかった。黄色い貨車の駅。
吉堀駅

渡島鶴岡駅でも降りない。もう寂しい。
渡島鶴岡駅

木古内駅に着いたらホッとした。
江差線列車
さらに乗って函館に出て、屋台村でおいしい刺身をいただいたのである。


 

TOP