廃線前を訪ねて


かつて北海道の大地を駆け巡っていた、今は廃線となった国鉄ローカル線のありし日の姿。

©北川宣浩 2000
夕張線

 

廃線前を訪ねて

富内線


線名:富内線(とみうち・せん)
区間:鵡川(むかわ)-日高町(ひだかちょう) 82.5Km
全駅:鵡川-富城-春日-旭岡-栄-豊田-穂別-富内-幌毛志-振内-似世宇-岩知志-日高岩内-日高三岡-日高町
開業:1922年07月24日 沼ノ端-富城-生鼈(のちの旭岡)
全通:1964年11月05日
廃止:1986年11月01日
訪問:1974年08月06日

振内駅入場券 日高町駅入場券
日高町駅スタンプ

1974年夏、大学自転車部の合宿を終え、広尾線の幸福駅を訪れたあと、帯広に戻って国鉄バスで日勝峠を越え日高町に出た。日勝峠経由の国鉄バスは豪雨の中を走った。バスルートの国道にはまだ未舗装区間もあって、泥んこ道を雨具を着たサイクリストが自転車を押していた。筆者も自転車で来ていれば、悲惨な目にあっていた。
しかし、富内線の記憶はほとんどない。今から思えば、雨に煙った沙流川と鵡川を見ながら景色を楽しんでいたに違いない。ただあるのは、列車を日高町駅の待合室で待っていたのだが、駅舎は白い無機質な壁で天井が高く感じたこと(もしかしたらコンクリート造りだったのかも)、そこをハエがうるさく飛んでいたことである。たしかキオスクもあった。
しかし、他の方のホームページで当時の日高町駅の写真を拝見したが、外観の写真からは天井が高い駅には見えず、記憶が曖昧になっている。

廃線後の1997年に日高町を訪れたとき、食事に入ったラーメン屋さんで日高町駅のあった場所を聞いてみた。方角を聞けば面倒なように「あっちのほう」、どうなっていますかとの質問には「もう草に埋もれているだろうね」と言った。自分の生活路線の廃止は、夕張線の登川駅同様、地元の人はどうでもよくなった遠い過去なのだろうか。実際は町外れに石碑が立ち、草に埋もれてはいない。

日勝峠を越える国道は立派になり、トラックがひっきりなしに通る。いずれは高速道路が開通するのではないか。

と書いたところ、最近の情報によれば高速道路は日高町の北部、占冠村のニニウを通る予定らしい。
その道東自動車道は2011年10月に開通した。札幌から高速道路だけで帯広方面に行けるようになった。ニニウは大変山深いところだが、トマムリゾートがあるから経済効果は高いかもしれない。札幌と帯広・釧路方面を結ぶ道東自動車道の恩恵が、この山の中にも訪れることを願ってやまない。ただし赤岩青巌峡などの旧道沿いの名所が見にくくなったのは残念だ。

 

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