廃線前を訪ねて


かつて北海道の大地を駆け巡っていた、今は廃線となった国鉄ローカル線のありし日の姿。

©北川宣浩 2000
天北線

 

廃線前を訪ねて

深名線


線名:深名線(しんめい・せん)
区間:深川(ふかがわ)-名寄(なよろ) 121.8Km
全駅:深川-円山-上多度志-多度志-宇摩-幌成-下幌成-鷹泊-沼牛-新成生-幌加内-上幌加内-(雨煙別)-(政和温泉)-政和-(新富)-添牛内-共栄-朱鞠内-湖畔-(蕗ノ台)-(白樺)-北母子里-天塩弥生-西名寄-名寄
……( )の駅は1990年4月に廃駅。
開業:1924年10月25日 深川-多度志
全通:1941年10月10日
廃止:1995年09月04日
訪問:1980年03月10日

朱鞠内駅朱鞠内駅入場券
鷹泊駅入場券鷹泊駅

深名線はもっとも好きな路線だった。なんでこんなところに線路があるのだろう、駅があるのだろうと思わせるくらいの秘境を、ひたすら走っていたからだ。
沿線には朱鞠内ダムでできた道内一の人造湖である朱鞠内湖が広がるのだが、残念ながら車窓からは垣間見えるだけだった。朱鞠内ダムは列車からは見えないが、クルマで走ると林の中に忽然と現れ、不気味である。
深名線はさほどの秘境を走るのだが、冬期の代替道路の確保が難しいと、廃線は先のべされていた。けれども、1990年3月には、雨煙別(うえんべつ)、政和温泉(せいわおんせん)、新富(しんとみ)、蕗ノ台(ふきのだい)、白樺(しらかば)の各駅が、最寄りに民家がまったくなくなったことを理由に廃駅になった。

これらの駅がまだ供用されていた時、白樺駅に降りて次の列車を数時間待つ……という「遊び」をする鉄道マニアもいたものだ。ほんとうに回りには民家も何もなく、人も車も通らず、熊が出る危険性さえあったろう。筆者は新富駅で下車した老婆を目撃したが、老婆もその家も、もうないのだろう。

全線廃止は豪雪地帯のため冬期の代替え交通がないことを理由に日延べされていたが、1990年に一足早く一部の駅が廃駅になった。

1990年4月に一足早く廃駅になった各駅の、現役時代の姿


政和温泉駅 政和温泉
政和温泉駅はもともとは仮乗降場だったが、1987年4月より正式な駅に格上げされた。駅前には温泉旅館があり、温泉から上がって裸のままジンギスカンを楽しめたというが、訪問した1986年にはすでに閉業されて駅だけが残っていた。
現在は国道沿いに道の駅「政和温泉ルオント」がある。
雨煙別駅
雨煙別駅
新富駅
新富駅
蕗ノ台駅
蕗ノ台駅
蕗ノ台駅
蕗ノ台駅の崩れ落ちていた元ホーム。
蕗ノ台駅最寄りの廃屋。1986年
蕗ノ台駅最寄りの廃屋。かつては数戸の開拓農民が住んでいたらしい。
白樺駅
白樺駅

そのうち道路トンネルもできて、1995年9月3日をもって、第二次地方交通線廃止対象路線の最後の路線として廃線となった。筆者はそれに先立つ8月22日、家族で北海道旅行に行き、深名線全駅を巡り、宿泊施設の<レークハウスしゅまりない>最寄りの湖畔駅から名寄駅まで往復した。
全駅の写真と撮影したビデオをご覧ください。


線路の取り外しは急ピッチで行われていたが、1997年に再訪したときは、道路標識に「←白樺駅」などという懐かしいものがまだそのまま残っていて、廃駅跡を訪れやすくなっている。
沿線の幌加内町は日本一のそばの産地としてそば畑が広がるが、過疎化は免れず廃屋や廃校・廃郵便局も目立つ。


深名線全駅写真


1995年8月20~21日撮影。9月4日廃線。

深川駅 円山駅 上多度志駅
多度志駅 宇摩駅 幌成駅
下幌成駅 鷹泊駅 沼牛駅
新成生駅 幌加内駅 上幌加内駅
政和駅 添牛内駅 共栄駅
朱鞠内駅 湖畔駅 北母子里駅
天塩弥生駅 西名寄駅 名寄駅


 

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