アメリカ横断ウルトラクイズ
クイズ王の本

歴代クイズ王が語るウルトラクイズ必勝法
「知力・体力・時の運」次のクイズ王はあなた!かも、しれない?

クイズ王の会/篇
©北川宣浩・森田敬和 1987
パンナムビルニューヨーク

スタッフが語る、ウルトラクイズ秘話(3)

毎年こうやってウルトラクイズはスタートする

 第1回が大好評のうちに終わり、それから毎年、ウルトラクイズは続いています。

 来年もやると決めるのは番組が終わった直後。毎回3月ごろから具体的に始動しはじめます。膨大な量を要する問題は4月ごろから制作スタート。クイズ形式にとらわれず、とにかく問題をたくさん作って、全部で1万問は作ります。1問目の自由の女神問題だけでも100問くらい作り、その中から選びに選んだ問題が出されるのですから、挑戦者が頭をかかえて電話に走るのも無理はないですね。

 問題は重箱の隅をつついたようなどうでもいいのは作らず、挑戦者の中の誰かには答えてもらえる問題を出しているつもりです。実際使われるのは1万問の中の1000問ですから、スタッフは水子地蔵と一緒にボツ問題地蔵も作らなくちゃと冗談を言ってました。

 アメリカのどこの土地で撮影をするかが決まるのは、6月上旬です。実際のロケハンは7月から行われます。ロケハンで撮影に不向きと分かれば当然変更されます。決まったロケハンスタッフが行くのではなく、何人ものスタッフが手分けをしてあちこちに飛び回ります。ロケ地の決定にあたっては先に述べた条件にあてはまることの他、挑戦者や視聴者の心に残る場所で撮影するよう気をつけているそうです。

 ロケ地は常にA地点、B地点と2ヵ所用意しておきます。なぜなら交通機関のスト、天候や交通事情などで撮影が不能になることもあり、代案を常に用意しておかなくてはならないのです。海外ですから万全の準備が必要なのです。例えば第10回の南米コースリオデジャネイロでは、北米コースのナイアガラに対してイグアスの滝でするつもりでした。しかし、航空会社のストと現地の洪水のため、撮影地をリオに移さざるを得ませんでした。

 8月になると中旬には後楽園予選が開かれますから、もう毎日会議です。会議で決まった重要事項は頭に入れ、書類は特に用意しないし残しもしないそうですので、挑戦者のスパイがスタッフルームに忍び込んでも何もないから大丈夫だって。

 クイズ形式はドロンコありバラマキあり大声ありといろいろですが、どういう形式にするかはスタッフ全員の合議制をとっています。クイズ形式を選ぶ基準は、第一に安全であること、そして実現できるものであること。例えば当初機内クイズの成績が悪い人はパラシュートで落とそうと考えていたんだって。こういうのはボツの例だが、何を考えてんだろ。

 クイズ形式を思いついたのはいいけど、本当にできるかどうかの実験を、若いスタッフを実験台にして8月中旬ごろ国内でしています。単にやってみるだけでなく、VTRを撮って絵で見て面白いかどうか、改良の余地があるかを検討します。そこでどの土地でどのクイズ形式をするかが決められます。罰ゲームの中にも日本で実験をしているものもあるそうです。そしてクイズに使う舞台セットはすべて日本で作り、日本から持っていきます。

実験でうまくいっても現地でうまくいかなくてボツになる例もあり、例えば今でこそ有名なドロンコクイズ。あれは第4回が初登場でしたが、最初は第3回で行われるはずでした。海岸に○と×との壁があって、正解ならゴムボートに落ちる、失敗すると海へ落ちてしまうという形式を考えたのですが、ロケハンしたらふさわしい場所がなくて第3回はボツに。翌年ドロンコクイズにアレンジされて、今や推すに推されぬ名クイズになったわけです。

スタッフの地獄旅

 それではスタッフのハードな1日を、時間を追って書いてみましょう。

 ホテルで朝4時半起床。ホテルには荷物置き場用の部屋を借りていますから、そこから1時間かかって荷物をバスに積み込みます。なにしろセットや機材、個人の荷物を含めて100個を越えるため、これだけでたいへんな作業になります。田舎ではポーターが一人しかいないホテルもあり、そんなときは目もあてられません。機材は高価でこわれやすいものが多いため、アシスタントディレクターが見張りをすることも。ようやく軽く朝食をとって、6時にはクイズ会場であるロケ地に向けて出発します。移動中のバスでも寝るわけにはいかず、打ち合わせです。その間福留さんは問題のどこを強調して読むか、どこで区切るか、誰がどう答えたらどのようにフォローするかなど、問題チェックをしています。

 場所にもよりますが、8時ごろロケ地に到着。スタジオならある程度の設備はすでに整っていますが、何もない屋外でやるのだから一からセッティングしなくてはならず、煩雑さを極めます。電源を引き、VTR機材をつなげる。挑戦者が座るテーブルを組み立て、ウルトラハットやマイクをセット。もちろんテストが繰り返されます。舞台装置が大掛かりであれば、もっと時間はかかり、全部で2時間から2時間半も準備に費やします。一方で別のスタッフは会場責任者やゲストと打ち合わせをしています。英語でするのでそれだけでもたいへんです。

 挑戦者はセッティングの分だけ遅く出発できるので、本当は挑戦者のほうが楽なのです。10時ごろからクイズが始まって、その時間が1時間から1時間半。正午ごろすべてが終わって撤収作業に入ります。しかし当然罰ゲームがありますから、ある班のスタッフは罰ゲームの撮影に向かいます。罰ゲームの撮影は、敗者が本当に罰ゲームに気持ちを同化するまで行うため、3時間くらいかけます。それが終わって敗者を無事空港まで送り届け、ホテルに戻るともう夕方です。

 一休みする暇もなく翌日の打ち合わせ。夕食をとって7時からは全体会議です。会議ではその日のビデオをチェックし反省をしたり、残った挑戦者の個性に応じて問題内容を組み替えたりもします。明日の注意点を確認しあい、9時に打ち合わせが終わるスタッフもいれば、シャワーを浴びる間もなく次のロケ地へ先行打ち合わせに飛ぶスタッフもいる凄まじさです。

 

 

公共の宿

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