TVクイズ大研究

TVのクイズ番組を裸にした本!
数々の番組で優勝を続ける筆者が、自らの経験と頭脳からあみ出した、本当は公開したくない、
TVクイズ攻略のまる秘カリキュラム一挙公開!

©北川宣浩 1981
優勝旅行

第6章 優勝!念願の海外旅行へ出発!


−−−−ついにやった!念願達成!!
でも実際にはどんな旅行になるの?
税金はかからないの……?

優勝!念願の海外旅行へ出発


賞品・賞金−−私感


 クイズの賞品・賞金は豪華すぎるから、記念品程度にして、残りは寄付したらどうかといった投稿が、年に何回か新聞に載る。でも、紀元前の昔から「勝者にはほうびを」の風習だったし、TVの演出上"豪華"なものを出さざるを得ないだろうから、とやかく言わない。むしろ"豪華さ"を売るなら、現在の百万円までの規制は低いくらいだと思う。でも、クイズに出る目的が、一般に賞品や賞金目当てのように思われているようだが、決してそうではないことをぼくは言いたい。新聞や雑誌がクイズ番組紹介やクイズマニアのインタビューなどを載せると、決まって第一に書くのが、賞品や賞金について。"稼いだ賞金○百万円、海外旅行○回、ダイヤの指輪、電子レンジ、カーペット……部屋は賞品で埋まっている"こんな記事を目にした方も多いだろう。雄かに他人のサイフの中身には興味があるし、賞金や賞品が多いほど、一種のハクがつく。ぼくは何度となく、
「いくら稼ぎましたか」
「まじめに仕事するのがバカらしいでしょ」
「クイズでメシを食えばいいのでは」
「物を買う必要がないですね」
「ケチ」
「知識はあるけど知恵や常識がない」
「クイズに出て喜んでいるのはバカだ」
などと言われたことか。

 1976年9月のクイズ初出場から1980年10月までの5年間に14回ほどクイズに出、5回優勝、二四六万八千円を獲得した(賞品は別)。月収になおすと三万九千円ほどで、こづかいにはなっても生活はとても無理だ。お金や物が目当てなら真面目に働くのに限る。

  確かに最初は外国へ行きたいがために出場したが、すぐにその考えを捨てた。クイズの魅力は"ごほうび"ではないのだ。答える前の緊張感、答えた時の満足感、前もって予測していた問題が出た時、問題の途中なのに答えを言い当てた時、タッチの差で誰よりも速くボタンを押した時、そして優勝したその瞬間。これらがクイズの魅力であって、賞品、賞金は二の次三の次、四の次なのだ。見ている側としても、共にクイズに答え、次々に答えていく解答者に舌を巻いたり、逆に答えられない解答者に気をもんだり、誰が優勝するかハラハラしたりする楽しみがある。

 知識クイズにはこれらの楽しみがあるが、このところ、カンと運だけでゲームが進み、賞金だけが目当てのような「物もらい番組」が増えてきた。出場前の調査や勉強、自己の能力に関係なく、運だけで勝負が決まっていくので、出たいとも思わない。見ていても、あんなことで物がもらえるのかとバカバカしくなる。そのバカバカしさも番組のポイントのひとつなのであろう。

 賞品・賞金は種々の演出効果を狙って出すと思うが、物もらい番組の賞品は、まったくの広告である。東京キー局のいわゆるゴールデンタイムに15秒スポットを1回出すと、電波科だけで55万円かかる。ところが自社製品を賞品として提供し、性能や名前を一言ってもらえば、スポットCMを出すのと同じ効果があるうえ安上がり。しかも賞品をもらった出場者がワイワイ喜んでくれれば、その製品へのイメージも高まる。一回大仕掛けな舞台装置を作ってしまえば、ギャラのかかる一流スターを揃えたドラマなどより制作費ははるかに安くてすむ。射倖心をあおって視聴率があがれば、喜ぶのは局とスポンサーだ。

 それに、もらったところでたったの百万円。当のTV局員のボーナス1回分ではないか。今や百万円は、花吹雪が舞って跳びはねるほどの額ではあるまい。豪華な賞品、多額の賞金をイメージづけるなら、五百万円は出すべきだろう。

 物価がかわったように、視聴者のライフスタイルもかわってきた。それにもかかわらず10年前と同じように、海外旅行や家電製品が賞品の中心になっているのもいささか安易すぎはしないか。先日、あるクイズの予選アンケートで、「賞品に何が欲しいか」とあったので「一カ月の大休暇。その間スタッフがぼくの会社でかわりに働く」と書いておいた。親しいスタッフに対するジョークなのだが、実際には無理でも、演出でそれらしく見せることは可能だ。

 もっともクイズで何回か海外旅行を楽しませてもらったぼくが、こんなことばかり書いていては石を投げられそうなのでここらでやめる。要は、クイズは賞品、賞金ではないことと、現在の賞品などの内容も考えものだということを言いたかった。

 どうか「クイズマニアは賞金稼ぎ」と見ないでください(中には金の亡者みたいな人もいるけどね)。どうか、賞品、賞金をバラまくだけでない、クイズの魅力にあふれる番組を作ってください(お金を払ってでも出てみたい番組もあります)。だからこの本では、予選会でボールペンがもらえるとか、一問答えるといくらとか、そんな事柄については、特にやむを得ない場合を除いて書かなかった。

50万円以上には税金が


 いい話ではないけれど、すべてのクイズについて言える、税金の話。

 TVクイズでは、一回の最高賞金額は百万円までと公正取引委員会によって決められている。お金でなく、品物や旅行でも百万円相当までだ。このうち50万円までなら税がかからない"免税"、しかしそれを超えると、超えた分の10%が税金に取られてしまう。つまり70万円獲得したら、50万円を超えた20万円が課税対象となり、20万の10%、つまり2万円が税金で、手取りは68万円になる。同様に百万円獲得なら手取りは95万円だ。クイズに出るのは、お国のために働くことにもなっている。

 

 

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