TVのクイズ番組を裸にした本!
数々の番組で優勝を続ける筆者が、自らの経験と頭脳からあみ出した、本当は公開したくない、
TVクイズ攻略のまる秘カリキュラム一挙公開!
いくら答えがわかっても、ボタンを押さずにドナッては、得点にならない。ボタンを人より先に押さなくてはいけない。だから、TVを見ながら練習するのだ。机や本、イスのひじかけ、自分のひざなど何でもいい。ボタンのつもりでたたくのだ。
TVを見る。問題が出る。「赤穂浪士が討ち入りをしたのは何月何日のことでしょう」答、12月14日
"何月"のあたりでTVでは一斉にボタンを押すだろう。ピンポーンと押す音が鳴るから、この音より先に机なり何なりをバンとたたけばいい。"したのは何"あたりを聞いて押せれば合格。
TVクイズのボタンは、電子装置を使っておよそ千分の一秒の違いを判別できるとか。一番先に押した人にだけランプがついて、解答権があることを示すような配線になっている。グランプリは2位まで解答権があるし、ドレミファドンは、押した順にl、2、3、4……とデジタル表示がされる。いずれにせよ一番最初に押すに限る。
TVを見ているだけじゃ、実際のボタンがどんな形状なのかよくわからない。そこで解答者席がどうなっているか、イラストや写真で紹介しよう(P127−128)。
ボタンの押し方のコツは常に指をかけておくこと。人さし指一本をかけるのは、神経が集中しすぎて疲れるから、ぼくは人さし指中指薬指の3本でまとめて押すことにしている。手首はテーブルの上にのせておく。逆に妹は手首をのせないほうがいいそうだ。たいていリハーサルがあるから、何回か押してみて、自分の一番いいようにすればよい。
家庭では、TVを見ながら、わかったところでボタンに見立てたものを押す。TVより先に押して、しかも自分の答えたものが正解なら、始めて「できた」ことになる。3割できればいいほうだ。「TVを見ていると8割はできる」と豪語してる人でも、こんな方法で見ているのじゃなかろうから、おそれることはない。机ボタンでは納得しない人は、似たようなボタンを電気店で買ってくるなり、アタック25なら割り箸で代用するなりしてください。実際に先に押した人にランプがつく、数人で遊べる早押し機の配線図をこの本に載せたかったのだけれど、リレー装置がいるなど複雑で、ぼくの手に負えなかった。電気に詳しい方、配線図と見取り図を教えてくれませんか。
バンバンたたきながら見るだけでも、タイミングをとるいい練習になる。が、さらにどの問題ができて、どこで間違えたかとスコアをつけるとよい。こうすると漠然とできたできないを言うのでなく、「32問目でハワイへ行けた」「250点取れた」などと、かなり具体的に自分の実力がわかる。
ぼくは図のようなスコアをつけている。TVと同時に机ボタンをたたいた時は、TVに先を越されたとみなし、自分の得点にはしない。練習はきびしいほうがいいから。
アップダウン、アタック25は、○を10個ずつ5列計50個くらいノートに描いて番組を待つ。問題数が35〜55問くらいだから。TVと一緒に机ボタンで対戦。自分がTVより先に机ボタンを押して正解を答えると黒く塗りつぶす。不正解だと×をつける。ボタン押しがTVのほうが早ければ斜線を引く。同時にTVでは何番の人が、どの色の人が答えたかも印しておくと、どのくらいのペースで答えた人が優勝したかよくわかる。アタック25は、パネルの最後の状態もメモっておく。
グランプリは、ジャンルの頭文字、ス・芸・文・社・科・ノンを記しておき、正解をクリアーしたらその問題の点を書き、間違えたらマイナス表示。点に横線が入っているのは、TVに取られた問題だ。自分の得点を合計しておく。
このように実戦さながらにTVクイズを見れば、ボンヤリ見るよりはるかに実力がつくだろう。第一出場している気分になっておもしろい。
ナレーターの読みあげる問題文のどこでボタンを押すか、そのタイミングにもテクニックがいる。あまり早くに押したのでは、そのあと問題がどう変わるかわからない。ボタンを押した時点で、ナレーターは問題を読むのをストップするから、あとが聞けないのだ。かといって終わりまでのんびり聞いてると、他の人に取られてしまう。問題の難易にもよるが、TV出場者はたいてい文の途中で押して答えている。
そこで、実際のぼくの体験を再現してボタン押しのコツを説明したい。また、「どうしてこんな問題に答えられるのか。どこで知識を得るのか」といった質問もよく受けるので、「なぜこの問題に答えられたか、または間違ったか」という点についても、同時に説明する。
再現するのはTBSのベルトクイズQ&Qに出場した時のもの。Q&Qは80年2月で放送終了した。
1979年10月2日に10月4日放送分のベルトクイズQ&Qの録画があった。ぼくのお相手は徳原直美さんという、とてもすてきな奥さん。ほとんどの番組に出場、何回か優勝している強敵だ。
彼女は予選の時から一緊張のあまり気分がおかしくなる」と言って、スタッフを心配させた。これはフェイントでなく実際にそうなるのだ、食べられなくなったり、胃が痛くなったり、体が震えたり……。
実はぼくも胃薬を飲んでクイズに臨んでいる。出番待ちの時から、「主婦だと忙しくて勉強するヒマもないわ」なんて話を二人でしたが、話の合間にしきりに、
「(出るのが)いやだ、いやだ。ドキドキする」という。
「だったら応募しなきやいいじゃない」
「……でも……そう言ったって」
「やっぱりこの緊張感がいいのかなあ」
「そうね、これが何とも言えない魅力なのよね」クイズ好きはマゾなのかな。
Q&Qは一対一の賭け点制で、二人とも40点ずつ持っており、10点単位で賭ける。相手の持ち点がなくなるか、自分が100点になれば勝ち抜き、というルールだった。第1問「野球でホームランを打った時、審判はどんなジェスチャーをするでしょうか」
野球なんて全然興味がない。冒頭に「野球で……」と聞こえた時、イヤーな予感がした。オレを負けさせるワナじゃないかと。出場者の心理は被害妄想になっている。相手に有利なものばかり出るんじゃないかとの恐怖心がある。この問題に対しては確信が持てなかったが取りあえずボタンを押した。たまに見る中継で、審判が腕をグルグルまわしている姿が記憶にあったから、
「まわれまわれっていうようなジェスチャーですか」キンコンキンコン(正解のチャイム)
「そうそう正解」と司会の押阪忍さん。
青文字にしておいたが「○○ですか」と尋ねるような、あいまいな答え方は最低である。ズバリ簡潔に答えるべきだ。
第2問「チェスの盤を思い浮かべてください。描かれている模様は……」ポーン(ボタンを押す音)「はやい!」と押阪さん。
「市松模様」キンコン
問題にあるとおりチェスの盤を思い浮かべた。この程度の問題はボタン押しのスピードだけが勝負だ。第1問目のTVの映像や、チェス盤など、ぼくは視覚的に記憶してあることがらのほうが反応がいいようだ。物を覚えるとき、唱えてみる、書いてみるなど、いろんな方法があるだろうが、ぼくの場合映像を頭の中に焼きつけるのもいいみたい。
第3問「アメリカの海軍士官学校はアナポリスにあります。では……」ポーン
ここで押してしまったのは徳原さん。「では日本の……」と、ちょっと次が聞こえた。アナポリスと聞いてヤバイなど思った。ウルトラクイズでアメリカに行った時、アメリカ海軍と陸軍の士官学校の場所を覚えたのだけれど、忘れてしまっていたからだ。「では陸軍士官学校はどこにあるでしょう」ときたらぼくには答えられない。徳原さんは、このように変化すると先を読んだらしく「ウェストポイント」と答えたがブー(不正解の音)。そうだ、ウェストポイントだとぼくも思い出した。問題はこのあと、
「では日本の海軍兵学校があったのは広島県の何という島」
と変化し、
「江田島」
と、ぼく。江田島は映画や小説でよく取り上げられるので知っていた。
第4問「大阪の御堂筋の並木といったらいちょう。では日光名物の並木は」ポーン
「大阪の」ときたから、てっきり「今はなき銀座の並木は=柳」とくると思ったら日光の杉並木だった。これもボタンの差だ。このように、早押しクイズでは問題の先を予測する。
これでぼくの点は100点になり、1人勝ち抜きになった。
ベルトクイズQ&Qの次のお相手は、一見中学生風だが、実は子持ちの奥さん、栗林さん。
第1問「女性に根強い人気のあるマンガ、小さな恋の物語には……」ポーン
「チッチとサリー」ブー
一瞬アレッ? 虚をつかれた。ブーのはずはないのに。問題は「……にはチッチという女の子が出てきますが、彼女は高校生、大学生、OLのうちどれでしょう」と、予想外の方向に変化した。栗林さんが「高校生」と正解し、ぼくが負けている。
第2問「"お富さん"でもおなじみですが、塀ぎわに植えて、外から見えるようにした松を何というでよう」ポーン
これはサッパリわからなかった。粟林さんに「見越しの松」と答えられ、なるほどと思う。お富さんの歌にも出てくるなあ。予選会のように、時間があれば、歌を唱えてできたかもしれないが、ボタンも押せなかった。ちょっと古い事柄には弱い。ますます負けている。
第3問「黒沢明監督は"影武者"の撮影のため北海道である動物を……」ポーン
今度はぼくである。
「馬!」
「そうなんですね。なんと百五十頭も買い占めたそうです」
とナレーターの矢島正明さん。
「影武者」はじめ、「スターウォーズ」「スーパーマン」「地獄の黙示録」などの超大作は、封切り前からいろいろな話題が飛び交う。それらは極めてクイズになりやすい。この件は、新聞か週刊誌で知っていた。「ある動物を」と聞いているのだから、この時点で動物名を答えさせる問題だなとわかる。「ある○○」と問題文にあれば、○○を答えさせるのだから、ここでひらめいて、ボタンを押すのがテクニック。
第4問「神様といってもいろいろありますが、ことわざでたたりなしと言われるのは……」もち、さわらぬ神。日頃訓練(?)しているせいか、ボタン押しは圧倒的に速い。点が増える。
第5問「来年(80年のこと)アメリカのレイクプラシッドで冬季オリンピックが開かれますが、この大会のマスコット人形が決まりました。TVアニメのラスカルでもおなじみの……」ポーン。
「あらいぐま」キンコン
"ラスカル"であらいぐまとわかった。我が家では「あらいぐまラスカル」は見ていないが、TVプログラムにはよく目を通す。いい年をしたオッサンでも、子供とTVを見ていればできる。持ち点は90点とふえ、あと10点で100点。
第6問「結婚披露宴では、別れる、終わるなどの言葉は禁物。では披露宴が終わることを……」ポーン
「お開き!」キンコン
これにて2人勝ち抜き。4日放送分の録画は終了。おつかれさま。
さて、30分後に、ベルトクイズQ&Qの5日放送分の録画になった。スタッフに「勝ち抜く場合を考えて、着替えの上着を持ってきてください」といわれていたので、Tシャツの上に半ソデシャツを着る。今度の相手は中山さんという27歳の男性。
第1問「今日10月5日は旧暦8月十五夜、中秋の名月ですが、ところで十五夜の次の夜を十六夜(じゅうろくや)と書いて……」ポーン
「いざよい」キンコン
これは高校の古文の授業で習った。十五夜(じゅうごや)、十六夜(いざよい)、立待月(たちまちづき)、居待月(いまちづき)、寝待月(ねまちづき)と続く。
第2問「ふけゆく秋の夜と歌う旅愁という歌の中で、恋しやと歌われるのはふるさとですね。では懐しと歌われるのは……」ポーン
「父母(ちちはは)」
「ずいぶんタイミングがいいですねえ、中山さんがんばってくださいよ」
歌詞を知らないと無理だが、「恋しや」の段階で、問題文がこの先どう変わるかを予測し、すぐにでもボタンを押せる状態に構えておいた。私に出場なら秋の歌、春なら春の歌にちなんだ問題が出るので、歌集を前もって調べておくのがいいだろう。
第3問「食べておいしいのは牛丼、土曜日は半ドン、ところで極めて不愛想な応対の仕方は……」ポーン
「中山さん速い!」「つっけんどん」キンコン
頭の中で、○○ドンをいろいろ捜したが、とっさに出てこなかった。では次のような問題文構成にはどう対処するか。
「日本三名園とは水戸の偕楽園、金沢の兼六園ともうひとつは岡山の何という庭園でしょう」これは"三名園"と聞こえたところで3つ全部を頭に浮かべるのだ。"金沢"と聞こえたらボタンを押していい。"岡山"まで聞く必要はない。このように、2つや3つのグループの中から、そのうちのひとつを答えさせるものについては、最初にグループ全部を頭に浮かべて、答えを絞れるポイント、この場合なら"金沢"にきたらボタンを押す。岡山の後楽園が正解。
第4問「東北地方でミスリンゴのコンテストをするのは青森県。ではミスサクランボの……」ポーン
「山形県」キンコン
「ミスリンゴ」を聞いた時すでに、答えはサクランボの山形県となることがわかっていた。半年前に山形県を旅行して、サクランボ畑を見てきたばかりだった。
第5問「田舎へいくとよく見られますが、お巡りさんが家族と共に……」ポーン
「駐在所」キンコン
「北川さん速いナァ……」
つまり問題を聞いてからその答えは何かと考えるのでなく、問題を聞きながら答えが何になるかを推測しているのである。これにて3人勝ち抜き。
次は平井さんという女性がお相手。
第1問「にぎり寿司のタネのひとつにヒモと呼ばれるものがありますが、これは……」ポーン
「平井さん」
「赤貝」キンコン
第2問「エッチラ、オッチラ、アッチラ。民族大移動の原因を作ったフン族の王の名前は」ポーン
景気よく押したはいいが、実は全然わからなかった。ヤマカンで人の名前らしい「アッチラ」と言うとキンコン。やってみるもんですなあ。世界史で当然習っている人名だが、すっかり忘れていた。
第3問「驚いて顔がまっさおになることをこれを失うといいます。特にサービスをするときはこれを付けると……」ポーン
「速い、北川さん」まっさおになるのは血の気を失う。サービスするのは出血サービスだから、血と答えようとしたが、押したのと同時に「これを付けろ」と聞こえた。いくらなんでも「血を付けるサービス」とは言わない。グッと考えて「色」といったが、時間切れのブーと重なり、解答権は平井さんに移り、「色」を取られてしまった。
第4問「国産タバコの包装紙の内側に銀箔が使われていますが、この銀箔に使われている金属は……」
「アルミニウム」キンコン
ボタン差の勝利。
第5問「たいへん味の良いキノコで、比較的乾いた地面にはえるのに、漢字では湿るという字に……」ポーン
「シメジ(湿地)」キンコン
「そう、平井さんも押しているんですけどねえ、ほんと速いですね」
「味の良いキノコ」のところでシメジだと思っていた。「匂いマツタケ、味シメジ」というたとえは、よくクイズに出る。クイズ番組で得た知識もかなり多い。
第6問「ダイコン、ナス、ナタマメなど7つの材料を使った漬物……」ポーン
二人同時に押したが平井さんが速かった。「福神漬け」キンコン
ぼくは「七味トウガラシ」と答えようとしていたのでした。
第7問「漢字一文字で書き表す市がありますが、その中で洋食器でおなじみの燕市は……」ポーン
「燕市」が答えになるものと押したら、それが出てしまった。軌道修正して「新潟県」と答えキンコン。4人勝ち抜き。地理の問題は時刻表マニアだからたいてい答えられる。こういう場合「新潟県の燕市!」と、すばやく答えてもいいと思う。先日あるクイズで、
「童話、みにくいあひるの子や親指姫といったら……」でボタンを押して
「デンマークのアンデルセン」
と答えたおばさんがいた。うまい(ずるい)答え方だ。
「……といったらアンデルセンの作品ですが、アンデルセンはどこの国の人でしょう」「……といったら誰の作品でしょう」このどちらに問題がなっても正解になる答え方だ。
5人目は男性の佐藤さん。
第1問は省略。
第2問「次にあげる3人の野球選手はいずれも名前が同じです。その名前がわかり次第どうぞ。近鉄の柳田選手、阪急の福本選手、広島の……」ポーン
「豊(ゆたか)」キンコン
不得意とはいいながら野球の問題に答えてますなあ。これは阪急の福本が盗塁王なので、彼の名を知っていた。賞をとった人の名はゼヒモノである。広島のと続いたのは江夏選手のこと。
第3問「総選挙の投票日には必ずもうひとつある裁判官の……」ポーン
「最高裁判所裁判官」キンコン
「速い!矢島さん、問題どうなっているんですか」
「……の国民審査が行われますが、さて何裁判所の裁判官でしょうという問題だったんです。」
ぼくにも選挙権はあるし、新聞にも出ている。
第4問「川へ洗濯に行ったおばあさんが拾ってきた桃から生まれたのは桃太郎。では、拾ったウリから生まれたのは」ポーン「瓜子姫」キンコン
この童話は読んではいないが、何回もクイズに出た問題だ。「桃太郎」のあたりで「瓜子姫」だろうと思った。
第5問「ネットをはさんで行う球技のうち、ネットの幅がもっとも広いのはテニスです。では逆に……」ポーン
「卓球」キンコン
「逆に」と聞いてるなら広いに対して狭いしかない。問題の先を常に予測してあるので、「では」「ところで」「さて」のような「これからが本筋ですよ」との指示が出れば、いつでもボタンを押せる態勢になっている。5人抜き。
6人目は大内さんという38歳の奥さん。
第1問「牛の中でも特にミルクをとるものを乳牛といいますが、この乳牛を日本で一番多く飼育している都道府県は」ポーン
「オッ、大内さん」
「北海道」キンコン
ぼくのほうはてっきり「……乳牛といいますが、では畑などの農作業をさせる牛は何牛というでしょう」(答、役牛)となるものだと思っていたから、ボケーッとしていた。考えが一つの方向に固まっていると、急な変化にはすばやい対応ができないものだ。
ここで5日放送分の録画も終わり、次の録画は5日後の10月8日となったのでした。
えー、ぼくがまだ勝ち抜いているので、この再現をもう少し続ける。本筋の「ボタン押し」とはちょっとはずれたことなのだけれど、このQ&Qで実にくやしい思いをさせられたから、ここで合わせて書いておきたい。それは、問題構成や出場者構成はTV局がいいように決めて、暗に特定の人物を負けさせるような、あるいは勝たせるような操作も行われるということだ。
今まで書いたように、ぼくはかなりのペースで勝ち進んでいた。「ユトリ」をみせていたし、他の出場者に控え室でクイズの講釈をするなどして「強い人」「ナマイキなヤツ」とスタッフに思わせてしまったのかもしれない。8日録画分はひどい目に合わされた。
8日録画の9日放送分は先の大内さんとの対戦だ。控え室で彼女に、「今日の調子はどうですか」と聞かれたから、「今日は着物や料理の問題ばっかり出ると思いますよ」
と答えておいた。前回の録画より5日たっているから、ぼくを負かす為に女性向きの問題ばかり作るなと、半被害妄想的に思ってはいたが本当に出るとは……。
まず最初に驚いたのは出順が変更され、大内さんの次に、クイズに強い某女性が出るようになっていたことだ。10月2日に、大内さんの次に控えていた人は、1人分後ろに下がって、そこに予選成績のよかった某女性が組み込まれていた。この人はぼくの見た限りの番組ほとんどに優勝している人。彼女に聞いてみると、はじめの連絡では10日放送分だったのに、急に9日放送分に変更されたとか。明らかにぼくをつぶす設定だ。しかし強い人同士を組ますとクイズ戦がおもしろくなるので、これは文句をいわないことにする。許せないのはこの女性のほうで、再出場が認められていないQ&Qに偽名を使ってまた出てきたのだ(P88参照)。まあ、偽名を使わずとも再出場した人は何人か知っているけれど、もっと許せないのは問題構成だ。ビデオで再現する。
9日分は先週の続きで第2問目から始まる。スタジオには、ぼくが百万円をとった時のためにくす玉が用意されてはいた。
第2問「次のうち容積でなく重さ、つまりグラムで表示されるのはどれでしょうか。ミリン、油、お酢」ポーン
押したのはいいが、出まかせ押しである。自分にあまりなじみのない「ミリン」と答えればブー。大内さんが「油」と答えキンコン。帰ってから台所の油を見ると確かに内容量がリットルでなくグラムで表されていた。はやくも女性向き問題にイヤーな予感を覚える。「さすが主婦ですねえ」と押阪さん。
第3問「幻想交響曲はベルリオーズ、では幻想ポロネーズといえば誰の作品」ポーン
「はい大内さん」
「ショパン」キンコン
これはわからなかった自分がアホであった。音楽や文学のジャンルでは、似た題どうしを問題にするのも多いからだ。
「ロンドン塔は夏目漱石、では五重塔は」答、幸田露伴
「こどもの領分はドビッシー、では子供の情景は」答、シューマン
のように。ぼくの勉強不足であった。しかしあとで聞くと、大内さんは予選のアンケート用紙に「クラシックが趣味」と書いてたんだって!ぼくの持ち点は10点になった。
第4問「犬笛や黄金の犬などを書いたのは西村寿行です。では消えたジャイアンツや…」ポーン
今度はぼくである。「西村京太郎」キンコン
とどなる。推理小説は好きなのでたいていわかる。女性向きの問題の中にこんな問題も混ぜておくなんて、スタッフもやるなあ。でも大内さんもわかったけれどボタンが遅れたんだって。ゾー。
第5問「お葬式の時不祝儀ののし袋に何と書くかいろいろと迷いますが、宗教を問わず……」ポーン
「お、まだ問題出てないようですが北川さん」
「御霊前」キンコン
「宗教を問わず通用するのは、お香典、御霊前、お花科のうちどれ」という問題だった。ぼくは「生活の知識百科」とかいう本を読んで知っていたが、これも明らかに主婦向けの問題だ。若い男に香典袋はあまり縁がない。我が家でも「いくら包むウ?」とやってるのはバアさまである。やっと50点の同点に持ち込んだが、このあとは見るのもつらい。
第6問「ポーラの背広といえば夏物、冬物、合物のうち……」ポーン
「夏物」キンコン
と大内さん。ぼくも出まかせ押しをしたが遅れた。冬物と答えるつもりだったので、先に押しても無駄だったが……。ポーラの背広なんて聞いたこともない。背広はサマースーツとかスリーシーズンといった分け方なら知っているけれど。これも主婦向きだ。またも、
「さすが主婦ですねえ」
と押阪さん。
第7問「次にあげる野菜のうち、アク抜きをするために、煮汁に小麦粉を入れるとよいとされている野菜はどれでしょうか。芽キャベツ、カリフラワー、……」ポーン
「カリフラワー」キンコン
もちろん答えたのは大内さんである。「野菜」と聞こえた時から「チクショウ、またか」と思った。ホウレン草のアク抜きなら知っていたんだけどな。会場に来ていた妹は「小麦粉」と聞いてすぐカリフラワーとわかったそうだが、いかんせん男には不利だ。
第8問「金紗(きんしゃ)、綸子(りんず)、縮緬(ちりめん)。さて、ひとこしといったらどれでしょう」ポーン
「ちりめん」キンコン
「大内さんの勝ちです。今日は最初からいいペースでしたね。ボーナスコーナーへどうぞ」
まったくヒデー。何度ビデオを見返しても、この問題だけはドイツ語みたいにワケがわからない。ひとこしって何だろう。原料名か、産地か、数える単位か。いったい何でしょね。
確かにクイズに出たからには男といえども料理の問題に答えるべきだし、女でも電気の問題に答えるべきだ。クイズをするならあらゆる問題に答えなくてはいけない。しかしこの問題構成は8問中7問も女性に有利なようになっている。いくらなんでもぼくがよく答えるからって、それはないよ。4、5日放送分と比べても明らかに片寄っている。この問題構成をひどいと思ったのは本人だけでなく、しばらくは会う人ごとに「このあいだはやられましたね」などと言われた。
しょせん、クイズなんて単なる娯楽番組にすぎず、出場者なんてダシにすぎないなとつくづく思う今日このころである。司会者が「皆さんのお出でをお待ちしてまーす」と言っても、結局は視聴者の為に番組を作っているのです。