名人が教える150のノウハウ
いよいよ明日海外に旅立つ夜、まる金は彼女を部屋に呼んで、モエエシャンドンのドンペリニオンを傾けました。これは彼女がお祝いにくれたシャンペンです。ビクターのハイファイビデオHR・D725は、彼の優勝シーンをソニープロフィールHGの27インチに映しだしています。ワーッという割れんばかりの歓声が、テクニクスサラウンドシステムを通してボーズのスピーカーから二人の身体を包み込みました。
「これ、わたしと思ってパリまで持って行って……」
ほんのり染まった彼女が差し出したのは、成田山新勝寺のお守りでした。彼女らしいかわいい気持ちがたまらなく、彼はそれを握りしめ、おみやげはカルロス・パルチのセカンドバッグだけでなく、化粧ポーチも買ってきてやろうと密かに決め、ダイナースカードをカードホルダーに入れたのです。彼女は彼の左頬に軽くキスをしてくれました。
そのころまるビも彼女と一緒に部屋にいました。ゼネラルの16インチの白黒テレビには何も映っていません。でも、クイズの音が聞こえていました。そうです、彼はビデオがありませんでしたので、サンヨーのラジカセで録っておいた優勝シーンを聞いては、再び感激に酔いしれ、ニタニタしてるのでした。3本目のハイリキ・ワインカクテルを飲みほした彼女は、
まる金のクイズマニア | まるビのクイズマニア |
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「これ、わたしと思ってハワイまで持って行って……」
と、貴重品入れになる腹巻を取り出しました。彼は早速ピカピカの一次旅券と旅行代理店で作って貰ったトラベラーズチェックとAIUの保険カードを入れ、腹に巻きました。そして、「おみやげのムームーはどんな色がいい? 君には明るいのが似合うよね」
と精一杯ヨイショを言うのでした。彼女は彼の唇に長いキスをしてくれました。この2組カップルがその後どうなったかは、ご想像におまかせします。
翌日夜、成田空港南ウィングのダイナースラウンジで、脇に小さなボストンバッグを一つ置いたまる金は、留守中に貸すアウディ・シュバルツのキーを彼女に渡していました。そのころまるビは京成の特急からバスに乗り換える検問所で留まっていました。アコムで借りた大きなスーツケースの鍵が見つからず、汗だくになっていたのです。
エールフランスの機内でまる金は、早くもスチューワーデスに声をかけていました。ようやく大韓航空に乗り込んだまるビは、シートベルトの替わりに自分のベルトを締めてしまい、スチュワーデスの失笑を買っていました。
でもまるビは、まだ見ぬワイキキの浜辺と、市内半日観光で行くパンチボウルの丘とヌアヌ・パリを想像し、幸せな気分でいっぱいでした。そしてまる金も、スチュワーデスと一緒に行くことになった高級レストラン・アンブロワジーの料理を想像し、幸せな気分でいっぱいでした。