歴代クイズ王が語るウルトラクイズ必勝法
「知力・体力・時の運」次のクイズ王はあなた!かも、しれない?
準決勝地のプエルトリコまで来たのは、4人すべて女性でした。もちろんウルトラクイズ始まって以来のことです。それまで私たちはクイズに精一杯で、Tシャツとか、ジーンズとか、そんな服ばかり着ていました。おしゃれの余裕なんてとてもありませんでしたから。
でも、女4人が並んでそんな服装ではみっともないと、みんなステキな服を買って、バッチリお化粧して挑戦。女4人の通過クイズになりました。
こうなったら女の意地で負けられません。でも、2度も通過席へ行ったにもかかわらず、2度とも失敗してしまいました。再び通過席へ行くには、もう3回早押しクイズに答えなくてはなりません。
そのとき私は、高校時代にやっていたフェンシングを思い浮かべました。毎日毎日のハードな練習。とてもきつかった合宿。一瞬に賭けた試合。人間のギリギリの限界を、フェンシングを通して経験していたのです。インターハイで優勝した精神力が甦ってきました。
それからは、クイズがフェンシングの試合でした。福留さんの問題のポイントがきたらサッと突く。あの、インターハイに優勝したときの感覚でクイズに向かったのです。そして三ポイントとって通過席へ。通過クイズにようやく答えて、福留さんから「おめでとう」と大きな声で言われたときは、思わず涙してしまいました。
私の次に通過クイズに答えたのは、歳も近くてすっかり仲良しになった松澤典子ちゃんでした。実は典子ちゃんは体調を崩してしまって、プエルトリコではクイズ会場まで車椅子で運ばれたくらいなんです。それなのにニューヨーク行きを決めて、その精神力にはさすがの私も感服しました。
ニューヨークはあいにく小雨が降り、せっかく着たドレスの上にダウンジャケットをはおったくらい寒い日でした。
パンナムビルでは、最後の力を振り絞って優勝することができました。その時は率直に言って、自分で自分自身をほめてあげたいような気持ちになりました。よくここまで来れた、そして勝った、よくやったと思いました。
私は、不覚にも福留さんにのせられて、パンナムビルの屋上でボーイフレンドの名を力一杯叫んでしまいました。
「山口く〜ん、勝ったの私、すごいでしょーっ」
ええ、そうなんです、山口君って今の私の旦那様。
スタッフのご好意で、パンナムビル屋上から両親に国際電話をすることができました。母もまさか私が優勝したなんて信じられないようで、ただただビックリするだけでした。
優勝賞品は飛行機でした。一人乗りですが、エンジンもちゃんとあって離陸から着陸までできる、本当の飛行機。ロサンゼルス郊外の砂漠で、大空を飛ぶその飛行機を見て「やった!」と思いました。でもそこはウルトラクイズ。実は、プラスティックモデルみたいに部品がバラバラで、全部組み立てなければ飛ばないんです。その部品もトラック1台分はあるたいへんな数で、私が作ることなど到底不可能です。
けれどある日、浜松の人からお電話をいただきました。「テレビを見ていたが、ぜひあの飛行機を組み立てたい」という内容でした。このままほおっておいても粗大ゴミになるのはわかりきっていましたので、ぜひにとお願いしました。たいへん親切な方で、途中経過を何度も何度もご報告してくださいました。できあがったら、飛ぶところを絶対見に行くんだ、と期待していたのですが、残念ながら組み立てに失敗し、飛べない飛行機になってしまったのです。
でも空を飛ぶ夢は、別のところで本当に実現してしまいました。ある日、父が1冊の航空雑誌を持ち帰りました。それには私がいただいたのと同じ組み立て式飛行機が紹介されていたからですが、何気なくパラパラとその雑誌を読んでいると、日本航空のスチュワーデス募集広告が目に止まったのです。
そこで軽い気持ちで応募しましたところ、面接官の方がテレビを見ててくださったようで話がはずみ、とんとん拍子でスチュワーデスになってしまったのです。ウルトラクイズはフェンシングのファイトで頑張りましたが、今度はウルトラクイズのファイトが面接官に認められたようです。あるいは、これがウルトラクイズの本当の賞品だったのかもしれません。
あの手作り飛行機で大空をかけめぐる夢は実現できませんでしたが、ジャンボジェットで世界をかけめぐる私。本当に幸せです。今でもフライトをしておりますと、お客様から「ウルトラクイズに優勝した人でしょう」と声をかけられることもしばしば。「ええ、これが賞品の飛行機です」なんてお答えしますけれど。
高校時代、フェンシングのインターハイで優勝したことはずっしりと重く、私を消極的にしてしまったようです。でも、ウルトラクイズに優勝したことは、私を前向きにさせてくれました。人生のターニングポイントになったウルトラクイズ。そしてあのハチマキ。とっても、とっても感謝しています。
では皆さん、大空で、そしてニューヨークでお目にかかれる日を、楽しみにお待ちしております。