アメリカ横断ウルトラクイズ
クイズ王の本

歴代クイズ王が語るウルトラクイズ必勝法
「知力・体力・時の運」次のクイズ王はあなた!かも、しれない?

クイズ王の会/篇
©北川宣浩・森田敬和 1987
ゲートウェイブリッジ

2人で誓った世紀の対決……第8回/石橋史行(4)

決勝の朝

 準決勝はフィラデルフィアの通過クイズ。先に宍戸君が抜けてしまい、これでは彼だけがニューヨークに行くかな、まずいな、とあせりましたが、高根君と内野君をかわして、僕が決勝に進出となりました。決勝戦は石橋・宍戸の対戦となったのです。

 フィラデルフィアからニューヨークに向かうバスの中、僕たちは長かった、しかも信じられないような結末を迎えているこの旅を、万感の思いを持って振り返っていました。思えば遠いあの日、八王子横断ウルトラクイズなどという地元のイベントで優勝・準優勝を分かちあった僕たちが、今本物のアメリカ横断ウルトラクイズで優勝・準優勝を分かちあおうとしている。せめて後楽園だけでも通過しようと4度も敗退したのにあきらめず、5度目の今、二人でニューヨークに向かっている。日が傾くころ、テレビで見慣れた、けれど初めて見るニューヨークの摩天楼が見えてきました。夕陽を浴びて金色に輝く摩天楼。チラッと隣に座っている宍戸君を見ると、心なしか彼の瞳にも輝くものがありました。僕たちは5年前の2人の誓いを、こんな最高の形で実現させたことを、誇りにも似た感慨でかみしめていたのです。

 僕は決勝戦の当日朝、ニューヨークのホテルでこんなメモを残しています。
少し前に目がさめる。決勝の朝としてやはり胸の高まりがある。全力をつくし、勝つことを目標に、しかしあまり気負いすぎることなく自然体で、そして目と耳と指先は、獣のようにとぎすました感覚を持って臨みたい……

 摩天楼の間隙を縫ってヘリコプターが飛ぶ。
(読者のみんな、あのシーンの音楽を頭に浮かべて読んでくれよ)

 決勝ではどちらが勝ってもいいと思ってました。8対2で僕がリードしましたが、八ポイント取るとかえってプレッシャーがかかり、なかなか次が答えられないものなのです。宍戸君はグングン追い上げ8対6までセリ上がってきました。やるな、宍戸。しかし僕ももう1問、9対6。けれど宍戸君もまだ食いつく。9対7。そして問題、
「ビートたけしが自分で絵を描き、幼年時代を語った本は何」

「たけしくん、ハイ!」

僕は大声で叫びました。ついにやりました、ウルトラクイズ優勝! 勝って僕がまっさきにしたこと、それは宍戸君との固い握手でした。僕が今ここにこうしていること、それはすべて宍戸君がいてくれたからです。僕が勝っても宍戸君が勝っても、それは僕たちの友情がウルトラクイズに勝ったのに違いないのです。

 いままで他のクイズ番組に優勝しても、ちっとも表情が変わらなかった僕を、友人たちは元横綱北の湖みたいだと言いましたが、その僕がいっちょ前に興奮しました。もう最高の気分でした。クイズの中のクイズ、ウルトラクイズに勝つって、こんなに気分がいいとは。自分自身でもあんなに喜ぶとは思っていませんでした。

勝負とは

 優勝賞品のクラシックカーをいただきに、マイアミまで戻りました。けれど例によって組み立て式。組み立てるなんて僕の手に負えませんから結局手放してしまい、今は写真が1枚残っているだけです。けれど先日雑誌を読んでいたら、このクラシックカーの完成品が日本でも発売されるとか。完成品となると高価ですので、これまた僕の手に負えませんが、いずれお金をためて、この旅の記念に買いたいと思います。

 最後に、勝負に関しての僕の考えを述べて終わりにいたします。

 勝負は、常に勝つことが大切であり、第一です。もちろんそれが全てではありませんが、参加すればそれだけですべてがまっとうされるとは決して思えません。勝つことによって喜びを知り、次のなにかに進むことができ、また新しいものを得ることができるのです。負けるということは全てを失うことであり、それ自体にはなにも存在しません。ただ負けという事実をいかに自分のこやしとして還元し、どう吸収するかが大切です。それをすれば負けるということも尊い経験となりえるのです。それでも皆さんは、勝つことを第一に、全力をつくしてください。

 

 

公共の宿

TOP