TVクイズまる金必勝マニュアル

名人が教える150のノウハウ

©北川宣浩 1985
はてなマーク

2.取りすぎたら返す、賞金の悲劇


 クイズといえば賞金・賞品がまず頭に浮かびますね。ぼくはクイズの魅力は賞金や賞品でなく、クイズに答える爽快感だと固く信じて疑わないのですが、世間一般では、まだまだ賞金や賞品のためにクイズをするものだと思われている方が少なくないようです。もっとも、クイズに答える爽快感は、クイズをやっている人たちしかわからないものなのかもしれません。お茶の間で見ている視聴者の皆さんは、どうしても賞金や賞品に目がいってしまうのはいたしかたないことでしょう。賞金・賞品を出すこと自体は、優勝者には賞品を、という考えが遠くギリシャ時代からのならわしでしたから、なんの不思議もありません。

 ところで、賞金や賞品には上限があるのですよ。合わせて100万円まで、つまり、賞金が60万円なら、同時に貰える賞品は現金に換算して40万円相当のものまで、という規定があるのです。しかも一時所得として税金を10%天引きして手渡されるのが普通ですから、実質の手取り額はテレビで謳っているものより少ないのです(但し、確定申告をすれば税金が還付される場合が多い) 。かつては上限などなく、クイズ番組の賞金額はどんどんエスカレート。しまいには3000万円相当のマンションが賞品なんて番組も登場して(今の物価なら一億円位の価値!)、射倖心を煽るばかりだと、その筋が規制してしまいました。

 例えばクイズ・ミスターロンリーや百万円・クイズハンターのように、クイズに答えるたびに賞品が手に入る番組がありますね。どんどん勝ち進み海外旅行まで獲得したら、それらの現金換算額は当然100万円を越えてしまいます。そんな場合はどうするか。なんとシッカリ、越えた分に相当する賞品なり賞金なりをお返ししてしまうのです。テレビ画面で山のような賞品と、分厚い賞金の袋を抱えてニコニコしている優勝者は、VTRが止まり、照明が暗くなって「お疲れさまー」となったら、「おめでとうございました。どの品を置いていきますか」とスタッフから言われてしまうのですよ。しかも換算額は市価の上代。内容が15万円くらいのハワイ旅行でも20万円相当と言う番組もあり、その分余計に品物を返してしまい、あとで文句を言った優勝者もいるくらいです。

 でも、テレビを見ている限りでは賞金・賞品は豪華。そこで新聞の投書欄に、「報酬とは労働力の比重によって支給されるもの。TVクイズの賞金は世の中の正常な行動を破壊し、助成していくものだ。賃金や給料とは違ってこれだけは別格で、現実離れしている。雑学、断片的な知識で、ある人は何百万円も稼ぎサラリーマンの年間所得を上回るとは、正常な社会とは思えない。スポンサーの姿勢にも疑念がでる。正当な代価ではないからだ。(朝日新聞より)」といった投書が毎年のように載るのです。こういう投書を寄せる人はご老人に多いですが、こんな人ってクイズ番組を見るたびに憤慨しているのでしょうね。かわいそう。

 

 

公共の宿

TOP