TVクイズ大研究

TVのクイズ番組を裸にした本!
数々の番組で優勝を続ける筆者が、自らの経験と頭脳からあみ出した、本当は公開したくない、
TVクイズ攻略のまる秘カリキュラム一挙公開!

©北川宣浩 1981
ウルトラクイズ

第7章 特別番組 アメリカ横断ウルトラクイズ


必勝法はないかと聞かれると困ってしまう


 参加資格は、

 1、18歳から45歳までの心身ともに健康な男女。
 2、有効なパスポートを所持する者。
 3、申込書の書式がすべてととのっている者。

 で、過去の参加者も臆せず応募できる。パスポートのほかに、必然的にアメリカのビザも必要になるから、これも取っておいた方がいい。

 必勝法は……95%以上が運だろう。特に、後楽園やサイパン、グァムでのO×クイズは、一問でも間違ったらアウトだ。これに全問正解して生き残るのは至難のワザ。ある程度まで先へ進めば、第4章に書いたような方法で、努力次第でかなり居残れる。普通のクイズ番組ではキチンとした予選によって人を選び、実力差のないよう配慮をするが、ウルトラクイズは運さえよければだれでも予選合格の可能性がある。そこで、先へ行くにつれ、実力差がかなり目立ってくる場合もある。だから第1章で紹介したようなクイズ問題集や旅行先のガイドブックをトランクに高めて行き、現地で勉強したい。

 しかし、何も知識があればよいクイズ番組ではない。問題も、重箱のスミをほじくったようなものではなく、大局的なものを狙っているという。そこで知識のほかにも体力とツキ、そして何よりも「絶対に勝ってやる」意気込みを持ちたい。

 また、成田のジャンケンだが、これは気迫で相手をおさえこむこと。それに、ジャンケンはもっとも単純なかけひきのゲームだから相手の手の内を読むことだろう。

 挑戦者同士は、TV画面では互いに敵なのだが、実際はすぐに連帯意識が生まれ、その結びつきは一般の海外ツアーなどの比ではない。ぼくたちは夜、ホテルの一室に集まり、問題を出し合って翌日のクイズに備えた。その中の誰か一人が落ちるとわかっていながら……。放送終了後のスタッフとの打ち上げパーティーで、ぼくたちがスタッフに同形式のクイズを出したのも楽しい想い出である。

 第3回のメンバーはアラモアナクラブ(ハワイで泊まったホテルの名をとった)を結成し、今もよく会っている。旅行中はトランプをしたりバカ講をしたりで、スタッフから「少しは勉強しろ」とおこられたそうだ。

 第4回のメンバーも仲間意識が強く「敵はスタッフ」だったとか。毎夜トランプの大貧民をして、これで落ち込んだ人が翌日の敗者になったという。彼らはウィンドジャマークラブを結成した。

 参加者同士がこれほど仲良くなれるのも、ウルトラクイズの魅力のひとつだ。みんな翌年もつるんで参加して、つるんで後楽園で落ちるのがいつものパターン。過去の優勝者の姿を見つけても、ついて行かないほうが身のためよ。

 さて参加の心構えは、「タダで海外旅行へ行けるから」ではダメ。仕事をする気で行くべきだ。毎朝暗いうちから起こされ、クイズをするか、移動をするかの日々。充分な観光のゆとりなどない(スケジュール表参照=省略)。わずかな時間を利用してホテルのまわりをうろついたり、クイズ終了後会場である公園や遊園地をブラブラする程度。それはそれで楽しかったけれど、あそこへ行って何を見て……と、個人で旅行するような気で行ったらがっかりするだろう。行動の制約もあり「ホテルの外へ出ないように」「家族と連絡をとらないように」「(クイズ会場になる)砂浜へは行かないように」など、きびしい。

 また、いろいろなことをさせられるから、それに抵抗を感じない若い気持ちでいること。様々なクイズが展開されるが、何をするか直前まで全く知らされない。わずかに「水着ではない軽装で来てください(第4回のグァムで、女性はスカートでなくスラックスかGパンで来てください(第4回のアルバーカーキなど)」「とにかく寒いので、なるべくたくさん着て来て(第2回のデンバー)」「女性はパンストをはかないで(第4回のコロラド)」といったクイズの前の指示から、何があるのか推理するだけだ。そして、落ちるかもしれない不安感と超ハードスケジュールから、精神的にも肉体的にも疲労が激しい。医師も同行するが、体の弱い人は遠慮した方が無難だ。

 それに先へ行くとか、帰るとかはクイズ次第であり、個人の自由にはならない。仕事や学校を休んでもいいように、渡航前にキチンとしておくこと。よくあるのが「どうせハワイ程度までしか行けないだろう」と、一週間くらいの休暇しかとらずにやってくる人。勝ってしまえばイヤでも先へ行かされる。逆に「一週間しか休みがとれなかったからサ。ハワイでワザと負けるから、オレの相手になった人は先へ行けるヨ」なんて人もいる。こういう人たちには困りものだ。最後まで挑戦するつもりで準備するべきだ。何千人もの負けた人たちがいるのだから。

 ニューヨークなんて金を出せばいくらでも行ける。物見遊山気分でなく、クイズに参加してスタッフと共に番組を作るのだという意識が欲しい。先へ進むにつれ、挑戦者同士で「オレたちは日テレに利用されているにすぎないな」といった自嘲が毎回出る。利用されているには違いないが、その中で自分なりのものをつかんでいきたいと考えている。人生観をかえるような大きなもの、ウルトラクイズにはそれがある。

 最後に、賞金はまったく出ないし、賞品もTVでの演出効果を狙ったものなので現実的なうまみに欠ける。よってそれらが目当てだったり、タダで海外旅行をしたいなんていう安っぽい考えの人はいざ出てみると驚くことだろう。

 

 

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