シャーロック・ホームズ:新訳リブート

Sherlock Holmes: Rebooted Classics

— 現代の日本語でよみがえるホームズの物語 —

白面の兵士

THE BLANCHED SOLDIER

―白く変わり果てた戦友と、閉ざされた屋敷の真実―

第4章 白く変わり果てた再会

 五分後、僕らは庭の小道を進み、例の“謎の建物”の前に立っていた。
 ドアの前には、ひげの小柄な男――ケント氏が驚いた顔で立っていた。

「急ですね、大佐。これでは計画が台無しです」

「仕方ない、ケント先生。こちらの手は強引にこじ開けられた。ゴドフリーは会えるか?」

「ええ、中でお待ちです」

 彼は僕らを案内し、質素な造りの広い部屋へ通した。
 暖炉の前に、一人の男が背を向けて立っていた。

 依頼人のドッド氏は、思わず駆け寄った。

「ゴドフリー! よかった、無事だったんだな!」

 だがゴドフリーは手を振って制した。

「触るな、ジミー。近寄るな。……そうだよ、驚くのも無理はない。今の僕は、B中隊の“ランス・コーポラル・エムズワース”とは似ても似つかないだろう?」

 その姿は、確かに異様だった。
 アフリカの太陽に焼けた精悍な顔立ち――その上に、ところどころ白く抜け落ちたような斑点が浮かび、肌をまだらに漂白していた。

「だから人に会いたくなかったんだ」
 ゴドフリーは言った。
「ジミー、お前はいい。でも……そちらの方(ホームズ)には会いたくなかったな。まあ、理由があるんだろうけど、僕としては分が悪い」

「無事かどうか確かめたかったんだ、ゴドフリー。あの夜、窓から覗いたお前を見て……放っておけなかった」

「ラルフから聞いたよ。お前が来てるって。だから、ちょっと覗いてみたんだ。見られたくなかったから逃げたけどな」

「一体どうしたんだ? 何があった?」

「話は長くないよ」
 ゴドフリーは煙草に火をつけた。
「プレトリア郊外のイースタン鉄道線路沿い、バッフェルススプルイトの朝の戦闘を覚えてるか? 僕が撃たれたって聞いたろ?」

「聞いたが、詳しくは知らない」

「僕ら三人は隊からはぐれた。地形が入り組んでいたからな。スキンヘッドのシンプソンと、アンダーソンと僕だ。ボーア兵を掃討してたが、逆に待ち伏せされて撃たれた。二人は死んだ。僕は象撃ち銃の弾を肩に受けた。
 それでも馬にしがみついて、数マイル走ったところで気を失った」

 彼は淡々と続けた。

「目が覚めたら夕暮れで、体は冷え切っていた。すぐそばに大きな家があった。広いポーチと窓の多い家だ。あの土地特有の、骨の髄まで冷える寒さだった。僕はふらふらになりながら家に向かった。
 階段を上り、開け放たれたドアをくぐり、ベッドが並んだ大部屋に倒れ込んだ。布団を引き寄せて、そのまま眠った」

 ゴドフリーは煙を吐き、続けた。

「朝になって目を開けたら……そこは悪夢の世界だった。
 カーテンのない窓からアフリカの太陽が差し込み、白い壁の大部屋がはっきり見えた。
 僕の前には、巨大な頭をした小人のような男が立っていて、オランダ語で怒鳴りながら、茶色いスポンジみたいな手を振り回していた。
 その後ろには、奇妙にねじれたり腫れたりした人々がいて、僕を見て笑っていた。
 ――普通の人間が一人もいなかったんだ」

 ドッド氏は息を呑んだ。

「そいつらは英語を話せなかった。しかも、あの大頭の男は怒り狂って、僕をベッドから引きずり出した。傷口から血がまた流れた。
 あいつは怪物みたいに力が強かった。
 でも、騒ぎを聞きつけて、権限のある老人が来てくれた。彼がオランダ語で叱ると、そいつは退いた。
 老人は僕を見るなり驚いて言ったんだ。

『どうやってここに来た? ……いや、その前に傷の手当てだ。私は医者だ。すぐに包帯を巻こう。だが君は戦場より危険な場所にいる。ここは“ハンセン氏病患者の収容施設”だ。君はハンセン氏病患者のベッドで眠ったんだ』

 ……これで分かるだろ、ジミー?」

 ゴドフリーは苦笑した。

「戦闘前に患者たちは避難していたらしい。英国軍が近づいたので、医師が連れ戻したんだ。
 彼は自分は免疫があると思っていたが、それでも僕のような真似は絶対にしないと言っていた。
 僕は個室に移され、手当てを受け、数日後にプレトリアの総合病院へ移された。

 でも……帰国してから、顔に“これ”が出始めた。
 逃れられなかったんだ」

 彼は自分の白い斑点を指した。

「どうする? 隔離施設に一生閉じ込められるか?
 それとも、信頼できる使用人二人と、医師のケント先生に秘密を守ってもらい、ここで静かに暮らすか?
 父さんは僕を守ろうとしたんだ。
 秘密にしなければ、村中が騒ぎ、僕は引きずり出されて地獄行きだ。
 ……ジミー、お前にも言えなかった。
 父さんがなぜ折れたのかは分からないけど」

 そのとき、エムズワース大佐が僕を指さした。

大佐が指さす


 「こいつが、わしに白状させた張本人だ」
 エムズワース大佐は、僕が書いた紙切れ――“Leprosy(ハンセン氏病)”という一語――を広げて見せた。
「ここまで知っているなら、いっそ全部明かしたほうが安全だと思った」



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