サセックスの吸血鬼
THE SUSSEX VAMPIRE
―血に濡れた誤解と、母の祈り―
第4章 ホームズの推理が照らす“真実の牙”
「ところで、もう一人のお子さんですが」とホームズが言った。「赤ん坊にも会わせていただけますか?」「乳母のメイソンさんに連れてきてもらおう」
ファーガソンが言うと、少年はぎこちない歩き方で部屋を出ていった。
僕の医者としての目には、背骨の弱さがはっきりと見て取れた。
やがて少年が戻り、その後ろから背の高い痩せた女性――メイソン夫人が、美しい赤ん坊を抱いて入ってきた。
黒い瞳に金の髪、サクソンとラテンの血が見事に混ざったような子だった。
ファーガソンは明らかにこの子に深い愛情を注いでおり、腕に抱き上げると優しくあやした。
「こんな可愛い子を傷つけるなんて……」
彼は赤ん坊の首に残る赤い傷跡を見つめながら、低くつぶやいた。

ちょうどそのとき、僕はふとホームズのほうを見た。
すると、彼の表情が異様なほど鋭くなっているのに気づいた。
まるで古い象牙を彫り上げたように顔が固まり、さっきまで父子を一瞥していた目は、今は部屋の反対側――窓のほうへ釘付けになっていた。
僕も視線を追ったが、外は陰鬱な雨に濡れた庭が広がっているだけだった。
しかも外側の雨戸が半分閉まっていて、景色はほとんど見えない。
それでも、ホームズが集中して見つめているのは、確かにあの窓だった。
やがて彼は微笑み、視線を赤ん坊へ戻した。
そのぷっくりした首には、あの小さな赤い傷跡があった。
ホームズは無言のまま、丁寧にそれを調べた。
最後に、赤ん坊が振っている小さな拳を軽く握り、ひらひらと振ってみせた。
「じゃあな、小さなお方。君の人生は、ずいぶん奇妙な幕開けだね。――メイソン夫人、少しお話ししたいことがあります」
彼は乳母を脇へ連れていき、数分ほど真剣に話した。
僕が聞き取れたのは最後の一言だけだった。
「ご心配は、すぐにでも晴れるはずですよ」
無口で、どこか不機嫌そうな女性だったが、彼女は赤ん坊を抱いて部屋を出ていった。
「メイソン夫人はどんな方です?」
ホームズが尋ねた。
「外見はあまり愛想がよくありませんが、心は金のように純粋で、子どもに献身的です」
「ジャック君は、メイソンさんが好きかい?」
ホームズが突然、少年に向き直った。
少年の表情が曇り、首を横に振った。
「ジャッキーは好き嫌いがはっきりしてるんです」
ファーガソンは息子の肩を抱いた。
「幸い、僕のことは好きでいてくれる」
少年は甘えるように父の胸に頭を寄せた。
ファーガソンはそっと彼を離した。
「行っておいで、ジャッキー」
彼は息子が出ていくまで、愛おしそうに目で追っていた。
「さて、ホームズさん」
少年が去ると、ファーガソンは深いため息をついた。
「あなたをこんなところまで呼んでおいて、結局、同情してもらう以外に何もできないのでは……と不安になってきました。あなたから見ても、これは非常に繊細で複雑な問題でしょう?」
「繊細ではありますが」
ホームズは少し楽しげに微笑んだ。
「複雑だとは思っていません。これは純粋に推理の問題でした。そして、ベイカー街を出る前に僕の推理はすでに完成していたんです。ここで見たことは、その推理を一つずつ裏付ける作業にすぎませんでした」
ファーガソンは大きな手で額を押さえた。
「頼む、ホームズ……真実が見えているなら、もう焦らさないでくれ。僕はどうすればいい? どう立ち向かえばいい? あなたがどうやって事実を掴んだかなんてどうでもいい。ただ、本当に掴んでいるなら教えてくれ!」
「もちろん説明します。ただし、僕のやり方で進めさせてください。――ワトソン、奥様は僕らに会える状態ですか?」
「熱はありますが、意識ははっきりしています」
「それなら十分です。奥様の前でなければ、この問題は解けません。行きましょう」
「会ってくれない!」
ファーガソンが叫んだ。
「いえ、会ってくださいますよ」
ホームズは紙に数行を書きつけた。
「ワトソン、君なら通れる。これを奥様に渡してくれ」
僕は再び階段を上がり、ドロレスにメモを渡した。
彼女は慎重に扉を開け、中へ入った。
一分後、部屋の中から歓喜と驚きが混ざったような声が聞こえた。
ドロレスが顔を出した。
「会うって。聞くって」
僕が呼ぶと、ファーガソンとホームズが上がってきた。