這う男
THE CREEPING MAN
―九日ごとに“獣”になる教授―
第4章 月夜の邸で見たもの
翌朝、ベネット氏が最新の報告を持ってきた。ホームズの予想通り、彼は教授からひどく当たり散らされていた。
教授は僕たちの訪問を誰のせいとも言わなかったが、明らかに不機嫌で、何かに怒っている様子だった。
しかし今朝はすっかり元に戻り、満員の講義で見事な授業をしたという。
「奇妙な発作さえなければ、今の教授は以前より元気で、頭も冴えているくらいです。でも……あれはもう、僕たちの知っている教授じゃありません」
「少なくとも一週間は大丈夫でしょう」
ホームズは言った。「僕も忙しいし、ワトソンにも患者がいる。では来週の火曜日、同じ時間にここで会いましょう。その時には、説明できるはずです。解決できるかはわかりませんがね。
それまでに何かあれば知らせてください」
その後数日、僕はホームズと会わなかった。
だが月曜の夜、翌日の列車で合流するよう短い手紙が届いた。
列車の中で聞いたところ、教授の家は平穏で、行動も完全に正常だったという。
その夜、チェッカーズの部屋でベネット氏も同じ報告をした。
「今日、教授はロンドンの相手から手紙を受け取りました。例の十字印のついた封筒です。手紙と小包がひとつ。それ以外は何もありません」
「それだけあれば十分かもしれませんね」
ホームズは低く言った。「さてベネットさん、今夜で結論が出ると思います。僕の推理が正しければ、事態を一気に動かすチャンスが来るはずです。そのためには、教授を監視下に置く必要があります。あなたは今夜、眠らずに見張っていてください。教授があなたの部屋の前を通っても、声をかけず、できるだけ静かに後をつけるんです。僕とワトソンは近くにいます。
ところで、あの木箱の鍵はどこに?」
「時計の鎖につけています」
「やはり、そこを調べる必要がありそうですね。最悪でも、あの鍵穴は大したものじゃないでしょう。……他に、力のある男性はいますか?」
「御者のマクフェイルがいます」
「彼はどこで寝ている?」
「馬屋の上です」
「必要になるかもしれませんね。では、今夜の様子を見るまでは動けません。いったん失礼しますが……夜明け前にはまた会うでしょう」
深夜近く、僕たちは教授邸の正面玄関の向かい、茂みの中に身を潜めた。
夜気は冷たく、僕たちは厚手のコートに感謝した。
風が吹き、雲が半月を隠したり現したりしていた。
もし期待と緊張がなければ、ただの寒くて陰鬱な見張りだっただろう。だがホームズは、今夜こそ奇妙な事件の連鎖が終わると確信していた。
「九日周期が正しければ、教授が最悪の状態になるのは今夜だ」
ホームズは言った。「プラハ訪問の後に症状が始まり、ロンドンのボヘミア人と秘密の文通をしていて、今日その相手から小包を受け取った。すべて同じ方向を指している。何を飲んでいるのか、なぜ飲むのかはまだ不明だが、出所はプラハだ。九日ごとに摂取するよう指示されているらしい。……しかし、症状が異常すぎる。ワトソン、教授の指の関節を見たか?」
僕は首を振った。
「分厚く、角質化していた。あんな関節は初めて見たよ。手を見るのが基本だ、ワトソン。次に袖口、ズボンの膝、靴。あの関節は、あの“移動方法”でしか説明できない……」
ホームズは突然、額に手を当てた。
「ワトソン、僕はなんて馬鹿だったんだ! 信じられないが、どう考えてもそうとしか思えない。全部が一つにつながる。あの関節! 犬! ツタ! ……僕もそろそろ田舎の農場に引っ込むべきかもしれない。
――ワトソン、来るぞ! 自分の目で確かめられる!」
玄関の扉がゆっくり開き、灯りを背に教授の長身が浮かび上がった。
寝間着姿で、背筋は伸びているのに、前のめりで腕をだらりと下げている。
前に見たときと同じ、不気味な姿勢だった。
教授は一歩外に出ると、突然しゃがみ込み、四肢を使って動き始めた。
時おり跳ねるようにスキップし、異様なほどの活力を見せる。
家の壁沿いに進み、角を曲がって姿を消した。
その瞬間、ベネット氏が玄関からそっと出て、教授の後を追った。
「行くぞ、ワトソン!」
僕たちは茂みを抜け、家の側面が見える位置へ移動した。
半月の光が壁を照らし、教授の姿がはっきり見えた。
教授はツタの根元にしゃがみ込んでいた。
そして突然、信じられない敏捷さで登り始めた。
枝から枝へ、まるで喜びに満ちているかのように軽々と跳び移る。
寝間着が左右にひらめき、巨大なコウモリが壁に張り付いているようだった。
やがて飽きたのか、枝を伝って降り、再び四肢で地面を這い、馬屋のほうへ向かった。
ウルフハウンドのロイが鎖につながれて吠えていた。
教授の姿を見つけると、さらに狂ったように吠え立てた。
鎖がちぎれそうなほど体を震わせている。
教授は犬の届かない位置にしゃがみ込み、挑発を始めた。
小石を投げつけ、拾った棒で突き、手を犬の鼻先でひらひらさせ、怒りを煽り続けた。
――あれほど奇怪な光景を、僕は見たことがない。
威厳あるはずの教授が、カエルのように地面にしゃがみ込み、狂犬をさらに狂わせようとしている。
その残酷さは計算され尽くしていた。
そして――それは一瞬の出来事だった。
切れたのは鎖ではなく、首輪だった。
大きなニューファンドランド犬用の首輪で、ロイには緩すぎたのだ。
金属が落ちる音がし、次の瞬間、犬と教授は地面を転げ回っていた。
犬は怒りの咆哮を上げ、教授は甲高い悲鳴を上げていた。
教授の命は紙一重だった。
ロイは教授の喉元に噛みつき、深く牙を立てていた。
僕たちが駆け寄って引き離す頃には、教授は意識を失っていた。
危険な作業だったが、ベネット氏の声と姿を見たロイは、すぐに正気を取り戻した。
騒ぎを聞きつけ、馬屋の上で寝ていた御者マクフェイルが飛び出してきた。
「驚きませんよ」
彼は首を振った。「前にも見たことがあります。犬がいつかやると思ってました」
