シャーロック・ホームズ:新訳リブート

Sherlock Holmes: Rebooted Classics

— 現代の日本語でよみがえるホームズの物語 —

ぶな屋敷

THE COPPER BEECHES

「開かずの間と偽りの家庭教師」

第3章 窓辺の"ポーズ"と髪の毛の束

 「ホームズ様、あたしがどれほどこの奇妙な“儀式”の意味に興味を持ったか、きっとご想像いただけると思います。毎回、あたしの顔が窓に向かないように、すごく気を遣っているのが分かって……それで、背後で何が起きているのか、どうしても見たくなったんです」

 「最初は無理だと思いました。でも、すぐに方法を思いつきました。手鏡が割れてしまっていたので、その破片をハンカチに包んで隠しておいたんです。次の機会、笑っている最中にハンカチを目元に当てて、ちょっと工夫して後ろを覗いてみました」

 「正直、最初はがっかりしました。何もなかったんです。少なくとも、最初の印象では。でも、もう一度よく見ると、サウサンプトン街道に男が立っているのが見えました。小柄で髭のある男、灰色のスーツを着ていて、あたしの方をじっと見ているようでした」

 「街道は交通量の多い幹線道路なので、普段から人通りはあります。でもその男は、うちの畑の柵にもたれて、真剣な顔でこちらを見上げていたんです。あたしがハンカチを下ろすと、ルーカスル夫人があたしをじっと見つめていました。何も言いませんでしたが、あたしが鏡を使って後ろを見たことを、きっと見抜いていたと思います」

 「彼女はすぐに立ち上がって、『ジェフロ、あそこに失礼な男がいて、ハンターさんをじっと見てるわ』って言ったんです」

 『知り合いじゃないんですか、ハンターさん?』とルーカスルさん。

 『いいえ、この辺りには誰も知り合いはいません』

 『まあ、なんて無礼な! どうか振り向いて、あの男に帰るよう合図してください』

 『無視した方がいいんじゃないでしょうか?』

 『いやいや、放っておけば居座ってしまいます。どうか振り向いて、手で追い払うように合図してください』

 「言われた通りに手を振った瞬間、奥様がすっとブラインドを下ろしました。それが一週間前のことです。それ以来、窓辺に座ることも、あの青いドレスを着ることもなく、あの男の姿も見ていません」

 「どうぞ続けてください」ホームズが静かに促した。「お話は非常に興味深い展開を見せております」

 「ありがとうございます。ただ、少し話が前後するかもしれませんし、出来事同士に明確な繋がりがないかもしれません。最初の日、ぶな屋敷に着いたあたしを、ルーカスルさんが台所の裏手にある小さな離れに案内してくださいました。近づくと、鎖の音がガチャガチャ鳴っていて、大きな動物が動いているような気配がしました」

 『ここを覗いてごらんなさい』と彼は、板の隙間を指さしました。『見事な奴だろう?』

 「覗いてみると、暗闇の中に光る二つの目と、うずくまったぼんやりした影が見えました」

 『怖がらなくていいよ』と彼は、あたしがびくっとしたのを見て笑いながら言いました。『これはカルロ、うちのマスティフ犬だ。“うちの”って言ってるけど、実際に扱えるのはトラーだけなんだ。餌は一日一回、しかも控えめにしてるから、いつも獰猛でね。夜になるとトラーを放して、もし誰かが敷地に入ったら……神様が助けてくれることを祈るしかない。だから、夜に絶対に敷居をまたがないように。命が惜しければね』

 「その警告は冗談じゃありませんでした。二日後の夜、午前二時ごろにふと寝室の窓から外を見たんです。月明かりがとても綺麗で、芝生が銀色に輝いて、昼間みたいに明るかった」

 「その静かな美しさに見とれていたら、銅色のブナの木の影の下で何かが動いているのに気づきました。月明かりに出てきたそれは……巨大な犬でした。子牛ほどの大きさで、黄褐色の毛、垂れた顎、黒い鼻面、突き出た骨。ゆっくりと芝生を横切って、反対側の影に消えていきました。その恐ろしい番犬の姿は、どんな泥棒よりもあたしの心を凍らせました」

 「そして、もうひとつ奇妙な体験があります。ご存じの通り、あたしはロンドンで髪を切って、それを丸めてトランクの底にしまっていました。ある晩、子どもが寝たあとで、部屋の家具を眺めたり、持ち物を整理したりしていたんです。部屋には古いチェストがあって、上の二段は空で開いていましたが、下の段は鍵がかかっていました。上の段にはリネン類を入れていたんですが、まだ収納したいものがあったので、下段が使えないのがちょっと困って……もしかして、うっかり鍵をかけたままになってるだけかもと思って、鍵束を取り出して試してみたんです」

 「すると、最初の鍵がぴったり合って、引き出しが開きました。中にはひとつだけ物が入っていて……それが何だったと思いますか? あたしの髪の束だったんです」

 「手に取って見てみると、色も太さも、あたしの髪とまったく同じ。でも、どう考えてもおかしいんです。だって、髪はトランクの底にしまってあるはずで、鍵のかかった引き出しに入っているはずがない。手が震えながらトランクを開けて、中身を全部出して、底から自分の髪を取り出しました。そして、二つの束を並べてみたら……完全に一致していました」

 「奇妙でしょう? どれだけ考えても、意味が分かりませんでした。結局、その髪は引き出しに戻して、ルーカスル夫妻には何も言いませんでした。鍵のかかった引き出しを勝手に開けてしまったことで、あたし自身が悪いと思ったからです」

髪の毛を見つける




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